保育園や幼稚園の入園までに、ワクチン接種を。

集団生活は、感染症にかかりやすい?!

保育園や幼稚園などでの集団生活は、感染症にかかりやすい環境といえます。これは、多くの子どもと長時間、同じ空間で過ごし、病気の原因となる細菌やウイルスに触れる機会が増えるためです。なかでも肺炎球菌やヒブは、多くの子どもの鼻やのどの奥にすみついて[保菌*]、子どもの体力や抵抗力が低下すると、細菌性髄膜炎などの重大な感染症を引き起こすことがあります。

*保菌:鼻やのどの奥に菌がすみついている状態。保菌だけでは病気ではないが、病気になるリスクがある。

保育園児[0歳児]の肺炎球菌・インフルエンザ菌[ヒブを含む]の保菌状況保育園児[0歳児]の肺炎球菌・インフルエンザ菌[ヒブを含む]の保菌状況保育園児[0歳児]の肺炎球菌・インフルエンザ菌[ヒブを含む]の保菌状況

第23回日本小児科医会総会 和田紀之先生発表データより作成
東京小児科医会サーベイランス2011/日本小児科医会2012

保育園に入園して半年後の0歳児[31例]の保菌を調べると、8割の子どもの鼻やのどの奥から、肺炎球菌やヒブなどのインフルエンザ菌がみつかりました。

細菌性髄膜炎のピークは春

ヒブや肺炎球菌は、子どもの病気に対する抵抗力が落ちたときに細菌性髄膜炎などを引き起こすことがあります。細菌性髄膜炎や菌血症[血液の中に菌が増えている状態]の発症のピークは春。ワクチン接種による予防が大切です。

5歳未満における細菌性髄膜炎と菌血症の月別発症数5歳未満における細菌性髄膜炎と菌血症の月別発症数

対象:1道9県[北海道、福島、新潟、千葉、三重、岡山、高知、福岡、鹿児島、沖縄]
方法:2011年の1年間、1道9県において前方視的に全数調査を行い、肺炎球菌性髄膜炎及び菌血症、Hib性髄膜炎及び菌血症の発症例数を調査した。

庵原 俊昭ほか:厚生労働科学研究費補助金平成23年度総括・分担研究報告書 新しく開発されたHib、肺炎球菌、ロタウイルス、HPV等の各ワクチンの有効性、安全性並びにその投与方法に関する基礎的・臨床的研究 「小児細菌性髄膜炎および全身性感染症調査」に関する研究[全国調査結果]

月別発症数をみると、菌血症は4月が一番多く、細菌性髄膜炎は5月が一番多かったことがわかる。

監修:福岡看護大学基礎・基礎看護部門 基礎・専門基礎分野 教授
福岡歯科大学医科歯科総合病院予防接種センター長
岡田 賢司先生

保育園児の兄弟がいると、肺炎球菌やヒブを保菌しやすい?!

保菌は、保育園や幼稚園などの集団生活を送る通園児だけでなく、その通園児を兄弟にもつ子どもにも多くみられます。小児用肺炎球菌ワクチンとヒブワクチンの2つのワクチンで、細菌性髄膜炎を予防しましょう。

兄弟の有無と未就園児[0歳児]の肺炎球菌・インフルエンザ菌[ヒブを含む]の保菌状況

対象:2008年に佐渡島で出生した349名(参加率98.3%)
方法:乳幼児健診時(4、7、10、18、36ヵ月)に各対象者から上咽頭スワブ検体を採取し常在菌を調査した。また、出生歴、育児・家庭環境、受診歴などの情報を収集した。兄弟の有無による肺炎球菌・インフルエンザ菌[ヒブを含む]の保菌リスクの違いを統計解析によって算出した。

Otsuka, T. et al.: Pediatr Infect Dis J 32(7): 709, 2013より作成

兄弟に保育園児がいると、肺炎球菌・ヒブなどのインフルエンザ菌の保菌リスクが高かったことが知られています。

監修:和田小児科医院院長 和田 紀之 先生